宜蘭の最初の正史である陳淑均、李祺生『噶瑪蘭廳志』(1852年)によると、今から約200年前の1825年、宜蘭県の総監であった烏竹芳は宜蘭の山海は独特で美しいと感じながらも、その孤立した立地のため有識者がなかなか訪れることがなかったことに頭を悩ませていました。そこで、蘭地の名山・名水を広めるために代表的な観光スポットを8つ選びだしました。亀山朝日、嶐嶺夕煙、西峰爽氣、北関海潮、沙喃秋水、石港春帆、蘇澳蜃市、湯圍温泉が選び抜かれました。蘭陽八景の筆頭である亀山島は、太平洋の真ん中に位置し、「亀と蛇が海の口を押さえている」かのような特殊な地形で、それはまるで、亀と蛇が蘭陽平原を守っているようで、これまで宜蘭人の故郷の精神的シンボルとなってきました。
亀山島の亀の頭の下には火山の噴火口があり、140度の高温の温泉が湧き出て地上に上がることで、何層もの青いグラデーションを作り、「夢幻の牛乳海」と呼ばれています。しかし、この神秘的で美しい深海の下では、亀の尾箇所の豊かで多様な生態系に比べて、火山性温泉から発生する高温、高硫黄、高酸などの有害物質が漂う環境により、50元硬貨程度の小さな個体しか生存できず、生態系がほぼない場所となっています。高温湧出泉の傍らでひときわ異彩を放つのが、特殊種「亀怪方蟹」です。 CTRC臨海実験所の生物学者たちは、カニがなぜ、暑くて濁り、不毛で有害物質が多い環境で生き残ることができるのかを解明しようと今も多くの研究が行われています。思い返してみれば、地球上の生命の誕生は、地球表面の活動も火山噴火が頻発する不毛地帯ともいえる環境でした。今後、地球温暖化によって気候変動や地球環境が悪化した場合、生物の遺伝的多様性を理解することは、将来の生命生存に向けた希望となるかもしれません。